- 様々な情報と常識 - 

 1971年の放映開始からしばらくして、「仮面ライダー」の主題歌レコードが発売されました。当時、発売直後に買いました。もちろん、藤岡弘の初回プレスです。私にとって、そのジャケット内に掲載されていた写真こそが、「仮面ライダー」そのものでした。あの、「緑川ルリ子」と「蜘蛛男」がらみのスチールです。その後、人気が爆発した2号ライダー、新1号が「仮面ライダー」の代名詞になってしまい、旧1号関連の資料となるような写真は、極めて限られたものしか目にすることはできませんでした。

 1977年の「宇宙船艦ヤマト」、1978年の「STAR WARS」をきっかけとする「SFブーム」、「アニメブーム」、「特撮ブーム」で、いろいろな雑誌が創刊されたり、「テレビマガジン」、「テレビランド」で、「仮面ライダー」のスチールや解説が掲載され、状況は一変しました。「スカイライダー」で新シリーズの放映が開始されたのもこの頃です。おそらく、放映当時にファンであった人が、そういった雑誌の編集に携わるような年代になったことも関係があったのでしょう。ファン活動が底辺にあり、数多くの同人誌も刊行され、今までに見たことが無い写真などを目にすることができるようになりました。特に、1980年創刊の「宇宙船」では、当時のプロップやスチールなどが多数掲載され、毎回、発売を楽しみにしていたものです。

 その「宇宙船」が中心となり、1981年に「第1回特撮大会」、翌1982年に「第2回特撮大会」が開催され、第2回特撮大会では「ネオフェラス」というグループのブースにて、ヒーローマスクの展示が行われました。これは、今思い出しても壮観で、撮影用、アトラク用、造りおこしはとにかく、実物サイズが揃っていたという点では、当時の最高レベルだったと記憶しています。

 その中に、「仮面ライダー旧1号」のマスクもありました。今、思い出すと、かなり明るい緑色であったという印象があります。

 このとき、最も印象的だったのは、ウルトラマンのデザイナー、成田亨氏のトークショーです。司会役のスタッフが「ウルトラマンのマスクは3種類ありますが・・・」と話を持っていったところ、成田氏は、「いや、2種類ですよ」と答えました。戸惑うスタッフが3種類の分類を説明すると、成田氏がおっしゃったのは、「ウルトラマンのマスクの原型は2種類であるが、そのうち初期原型はラテックスで抜いたものとポリで抜いたものがある。」ということでした。このときから、「ウルトラマンの3タイプのマスクのうち、初期の2種類は同じ原型である」という「常識」が定着したわけです。1982年、ウルトラマン放映開始後、16年を経過していました。

 

旧1号レプリカマスク試作品

 さて、この項で何が言いたいのかというと、現在、いろいろと語られている「仮面ライダー旧1号」に関する、いわゆる「常識」というものは、放映後10年を経過した、あの「特撮ブーム」の時点から、放映当時にファンであった人々の活動の中で調査されたものであり、「考証」となると、極めてあいまいなものにならざるを得ないであろうということです。もちろん、我々一般のファンの目に触れていない資料が多数存在していることは否定できませんが、当時の実物が当時の状態で残っていない以上、考証の正確さは疑問です。何らかの権威がある人物が語れば、それが「常識」となってしまいます。

 「当時の実物が当時の状態で残っていない」ということに、異議を唱える方がひょっとするといらっしゃるかもしれませんが、旧1号篇の映像、スチールを検討していけば、第1話で使用されたマスクがリペイントされて、ボロボロになっていく姿を考察することができますし、その裏づけとして、「旧1号のマスクは全てリペイントされて、旧2号になった」とされる、当時のスタッフの証言があります。印刷媒体で紹介されたかどうかは記憶にありませんが、私は、私が信頼する人物から、直接当時のスタッフに聞いた話として1980年前後に聞いており、第1話で使用された旧1号の撮影用マスクというものは、旧1号として存在していないと確信しています。

 さて、その上で、雑誌等に解説されている内容を見ると、正直言って、どうにもチープな内容が多いというのが実感です。その原因として考えられるのは、雑誌で執筆(解説)している人は撮影当時現場にいたわけでなく、当時のスチール等から、いろいろと表面的な解説をならべる、要するに、我々、ただの「ファン」とそんなに違わない場合が殆どなのではないか?ということです。仮面ライダー関連の記載がある雑誌やムック本を買ったところで、結局、写真にしか意味がないということを、これまでにどれ程経験したことでしょう。

 さらに、マスクの解説の中で、造型する立場で、「どのような思想、感覚で、仮面ライダーのマスクは造型されたのだろうか?」という観点で語られたものはほとんど無く、せいぜいが技術論に終始している程度に感じます。

 このスペースは私個人のものであり、私は、このページによって、何らかの利益を求めるものではありません。仮面ライダー、特に旧1号のマスクを造型していく上で私が思ったこと、感じたこと、気づいたことを、ここに記録として残しておき、できることなら、興味を持つ人に見てもらい、意見を交換したいというのが、正直な気持です。

 表現に、多々、不穏当な表現もあるかと思いますが、ご勘弁ください。

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