- クラッシャー(前歯) -

 この部分は最も正確に造型しやすいと同時に、もっとも誤解しやすい部分であると思います。さらには、原作版とデザイン上での最大の相違点と言えるでしょう。原作版でのクラッシャー(前歯)は、全体として台形になっており、どちらかといえば「鉈」のイメージがあります。それに対してマスクでは「鋸」であり、全体として三角形に捉えがちです。しかしよくよく見てみると、中心部が台形か三角形かの違いはありますが、全体としての形状は「台形」の「鉈」として捉えることができると思います。この部分を「前歯」として捉えるならば、この感覚は必要でしょう。

 放映当時、この原作版との相違について随分不思議に感じたものです。その理由についていろいろと考えましたが、前歯の中心を尖らせることによって鋭角的な印象にしたいという意図があったのではないでしょうか。原作版では「殿様バッタ」の顔をモチーフにしてデザインされたのに対して、造型ではこの「原作版」と「髑髏」をミックスしてデザインするというプロセスであったことも影響していたことでしょう。

 原作版のクラッシャーに切り込みを入れて中心部を尖らせると、鋭角的な印象が強調されます。しかしこのままでは、「牙」のイメージが強く、「切る」というイメージが失われてしまいます。そこで、切り込みを浅くし、角度を鈍くすることで「牙」から「鉈」のイメージへと調整を行い、さらに原作版で立体的な三角形であった中心上部を、扁平な台形とすることで、「前歯」としての印象を整えたのかな?と想像しています。

 もう一つ考えられるのはその逆で、全体の「台形」をより扁平にした結果、間が開いてしまったために切り込みを増やし、あの形状に至ったというものです。ちなみに、上の図は3つ共幅と高さは同じにしてあります。かなり誇張した形にはなっていますが、原作版との違いを考える上で、比較しやすいかと思います。

 どちらにしても、旧1号のマスクから受けるイメージは「前歯」であり、扁平な「台形」として捉える必要があるのは確かです。

index