仮面ライダーの原点が「スカルマン」にあることは知られています。マスクに関しても同様で、明らかに「髑髏」のイメージを感じ取ることができます。「全体の形状」の項でマスクを上から見た形状について述べましたが、Cアイがなければ「髑髏」そのものといって良い形状をしています。その最大のポイントが、「全体の形状」の項で述べた、「Cアイの外側に続くラインが前にせり出している」ことだと思います。頭蓋骨の眼窟がイメージにあったのでしょう。付け足すならば、Cアイが「ハの字」に配置されているのも、「髑髏」のイメージからなのかもしれません。 上の写真は、15年程前に、私が粘土原型からおこしたものと、レプリカとの比較です。大きさが違うのは、実物がどれくらいの大きさか正確にわからなかったことと、サイドカバーをFRP成形しようとしたことが原因です。被りたがっていた友人の顔が大きかったことも原因かもしれません 冗談はともかく、正面形状はスチール等が豊富にありますので、比較的作りやすいです。側面も、なんとかなるでしょう。ところが、問題の上面は、大きく異なってしまいました。この最大の原因が、先に述べた「髑髏」のイメージが私の中になかったためであると考えています。 私は当時、マスク本体とCアイとのつながりについて、「球体のマスクからCアイ部が盛り上がっている」と考えていました。つまり、マスクは本来、球体に近い形状に「作りたかった」のだが、時間的余裕が不十分であったために、Cアイ外側に不本意な不連続部が「できてしまった」のだろうと考えたのです。その前提で、Cアイにつながるマスク原型のラインをできるだけ崩さないように注意し、原型を作りました。Cアイが実物よりも相対的に大きくなってしまったのは、このラインを崩さないようにした結果です。当時の私としては、製作者の意図をできる限り汲み、理想の形状を目指そうと思ったわけです。ちなみに、この時点でCアイは左右同じ形状を使用しています。 ところが、実物はCアイ部が明らかにせり出し、私が想像していたよりも有機的な形状をしていることが解ったとき、自分の思慮のなさに気付きました。製作者の意図は、私の想像とは異なるところにあったのです。ただ、このことで幸いだったのは、それに気付くことで、その他の「した」ことと「なっちゃった」ことの区別が、自分なりにし易くなったことです。つまり、全体形状の意図が汲み取れたことで、それに派生する個々の形状を、それまでとは違った角度で見ることができるようになりました。同じスチールを見ても、より多くのことに気付くことができました。もちろん、実物のレプリカを手にしたことが大きかったのは言うまでもありません。 そうすると、本当に必要な「ライダーマスクのどこがカッコイイと感じるのだろうか?」という部分に集中できて、「カッコイイとはこういうことさ」などと、どこかで聞いた台詞をつぶやきながら、手を動かすことができるようになりました。 「実物はこうだ」という考えはもちろん尊重するべきですし、考証としては大切なことだと思います。が、「徹底考証して当時のモノを再現した」という「モノ」に、違和感があるのは何故なのでしょうか。私は、オリジナルの「思想」や「感覚」が欠けているからではないか?と考えています。 造型というものは、「思想」あるいは「感覚」が非常に重要だと思っています。レプリカを作製する以上、オリジナル製作者の「思想」や「感覚」を理解しなければ、ただの複製だったり、それらしいだけのものだったりすると思うのです。「した」ことと「なっちゃった」ことの区別なく、寸分たがわず複製、再現するのでなければ、「思想」や「感覚」は微妙な「差」となって現れ、それがバランスを崩し、全体の印象を変えてしまうのではないでしょうか。 また、具体的な「モノ」が存在し、徹底考証したと言うならば、どこをどう考証して再現したのか明らかにしてもらいたいと思うのは私だけとは思えません。何故、これまでCアイその他のサイズや、マスクの上面形状について語られたことがなかったのでしょうか?ライダーマスクを作る立場で考えると、一番知りたいことだと思うのです。ライダーマスクのカッコ良さを自分の中で整理するためには必要でしょう。クラッシャーがラテックスだろうがポリだろうが、どうでもいいことじゃないですか。耳のエッジだって、アンテナの形状だってそうです。 オリジナル製作者の「思想」を汲んだ上で、自分の感覚を加えてこそ、自分なりに納得がいくライダーマスクが作れると思います。このHPがその手助けになれば幸いです。 |