○オリジナル 実物に対する見方っていうのは多種多様で、実物を手にしたとき、「すげぇ~!!」と感動したり、「へ~、こうなってるんだ~・・・」と思う人もいれば、「うわ~、こんなにいいかげんなものか~!」と思う人もいるでしょう。単純に「ああ、これが実物か。」と素直に受け入れるのも一つです。 旧1号ライダーの難しい点は、僅か13話の間に、毎回と言って良い程マスクの色、形状が変化しており、旧1号の第1話オリジナルが、そのままの状態では残っていないことではないでしょうか?もちろん、塗装の違いによる印象が大きいのですが、形状も明らかに異なっています。 異論を挟む方もいらっしゃるでしょうが、旧1号の第1話オリジナルが原型から抜かれた状態そのまま、言い換えれば、オリジナル原型が旧1号の第1話オリジナルそのものであったとは、私は考えていません。FRPで成形後、修正を経て、旧1号の第1話オリジナルになったであろうと考えています。もし、第1話オリジナルそのもののマスターモールドがあったならば、その後に製作された旧1号マスクは当然、そのマスターモールドから製作されているはずなのですが、それにしてはあまりに細部の形状にバラつきが見られます。当時の現場作業を想像すると、時間的にも、予算的にも量産を前提としたマスターモールドを製作する余裕があったとは思えませんので、旧1号マスク~旧2号初期マスクにかけては、そのほとんどが「ワンオフ」に近い状況で製作されたものと考えています。 アトラクション用の製作などは旧2号後半、主に新1号以降の話ではないかと思いますので、旧1号の時点で、撮影以外でのマスクの必要性はほとんど無かったはずです。 そういった前提で、一番最初に作製された旧1号第1話オリジナルマスクの数少ないスチールを見ていくと、やはり、コピーではない、オリジナルとしての魅力が溢れています。私を含め、多くの人がこの旧1号第1話オリジナルマスクに憧れているという事実は、オリジナルの魅力の証明なのでしょう。 マスターモールドに関する謎として、検討用原型を指さすスナップ('71.3.13の毎日新聞夕刊が初出、その後、スーパービジュアルや大全集にも掲載)を見ると、クラッシャーのサイドカバーは前歯に被っているし、覗き穴は左右への広がりがなく、原作の形状に近いものになっています。その後、この原型はどのようになったのか、非常に興味があるところです。
○レプリカ 市場に出回っているライダーマスクレプリカには色々な種類があるかと思いますが、市販キットは論外として、もし、自分で手を入れる覚悟があるのならば、どのレプリカでも大差ないでしょう。逆に言うと、どれもそのままでは旧1号第1話オリジナルマスクとして納得がいく形状はしていない、というのが私の意見です。おそらく、初めてレプリカを手にした人の多くは「なんじゃぁ、これ?」と思うのではないでしょうか。それほど、間近で見ると「いいかげん」です。ですからここで、製作者は「レプリカを仕上げる」ということに対して二択を強いられます。 一つは「実物はこうだということで、そのままできるだけ修正せずに仕上げる」、そしてもう一つは「徹底して手を入れて、自分のイメージに近づける」です。 どちらが正しいというのではないのですが、「そのもの」が存在しない旧1号の場合、多かれ少なかれ、後者を選択せざるを得ません。「special」の項をご覧になった方ならば想像がつくかと思うのですが、もしウルトラ系のレプリカならば、私は迷わず前者を選択します。しかしながら、「実物」が存在しない「旧1号第1話オリジナルマスク」に関しては、やるからには中途半端ではなく徹底的にやりたいと思い、自ら泥沼に入っていったわけです。 とはいえ、「実物はこうだということで、そのままできるだけ修正せずに仕上げる」にしても、表面仕上げとCアイの外形擦り合せぐらいで済むレプリカばかりならば良いのですが、そこまで親切で、出来が良いレプリカを入手するのは困難です。ましてや、「歪んだレプリカ」を修正するのはかなりの労力を要するので、それなりの覚悟は必要です。完成品については後述します。 レプリカマスクキットなどの説明に「ガレージキットを作ったことがある人ならば・・・」という表現がありますが、個人的には、あれは約20年前の、無発泡ウレタンの塊がゴロゴロ入っている感じで、箱を開けた瞬間「これ、どうするんだ~?!」と叫びたくなるガレージキットのことであって、最近の優れたガレージキットの事ではないと思っています。ですから、模型工作の趣味が無い方は、手を出さない方が無難です。実際、ある程度のモーターツールは必須ですし、接着剤、パテ、塗装などの知識も必要です。 第1話でのクラッシャー前歯の破損や、その後のマスクの傷み具合から想像して、旧1号当時のマスクは、かなり薄く、軽く作られていたことが想像されます。となると、それらのマスクのレプリカは、オリジナルの歪みではない、マスクを使用したことや修理によって生じた歪みを有している可能性があります。さらに、その子、孫となれば、どの時点での歪みなのか判断することも、修正することも困難な状態になることを覚悟せざるを得ません。もっと言ってしまえば、桜島1号以降のマスクが、何をマスターモールドとしているのかによっては、桜島1号以降のマスクのマスターモールドそのものが、旧1号第1話オリジナルマスクとは異なることも考えられます。 また、原型とするマスクが歪んでいなくても、型採り、FRP成形の段階で歪む場合もあります。最近でこそシリコーンゴムは価格が下がりましたが、10年程前までは今の倍以上はしていました。そうすると、型採りにシリコーンゴムをふんだんに使うことなどできず、バックアップもしっかりしていなかったりで、成形品が歪んでしまったということが多々あったかと思われます。 要するに、もし旧1号第1話オリジナルマスクのレプリカを目指すならば、「旧1号第1話オリジナルマスクというものは世の中に存在していない」ということを前提に、入手したレプリカマスクをベースに、自分で理想のラインを探していく作業が必須だろうと考えています。例え実物が「ゴツゴツ」した表面形状であっても、「滑らか」であってほしいなら滑らかにすればいいんです。もし、その形が自分の中のイメージと合致するものであるならば、それが必ずしも実物に忠実なものでなくてもいいんじゃないでしょうか。我々が憧れたのはTVのブラウン管や、雑誌媒体を通してのものなので、レプリカにその「フィルタ」が加わるのは当然かと思います。重要なことは、所詮「実物」ではないわけですから、「カッコイイ!」と感じるポイントをしっかりと押さえて、オリジナルに敬意を表しながら、より良いものにしようとする気持なのではないかと考えています。 私をはじめ、旧1号第1話オリジナルマスクのレプリカを目指す人の殆どはアマチュアであり、「趣味」で製作を行うのだと思います。一方、「実物」を製作したのはプロの人であり、「仕事」として製作したわけです。経験や技術に劣る我々アマチュアが唯一自信を持てる部分といえば、「旧1号第1話オリジナルマスクが好き」という気持だけです。でも、その気持があれば必ず、納得できる形に近づいていけると考えています。 一番難しいのは、完成品の購入でしょう。「作れない、でも欲しい!」という人にとってはこの道しかないのですが、「もし破損したら、修理はどうするのだろう?」とか、「よく見てみたら気に入らない部分があった場合、どうしよう?」など、不安がいっぱいでしょう。できることなら、製作してくれる人とあらかじめ良く打ち合わせをし、希望を明確に伝え、双方納得の上で製作にとりかかることができれば理想的です。なかなかそういった状況を作れる機会は少ないですが・・・。 ついでと言っては何ですが、過去、ライダーマスクの左右非対称や歪みについては多くの出版物で語られてきましたが、その多くは後頭部の三角形であり、クラッシャーの形状であったと記憶しています。個人的には、「歪んだ状態」というのは必ずしも旧1号ライダーとして必要とは考えていないので、「実物通り歪んでいます」とか、「歪みまで再現しました」といった表現を目にすると、「それが必要なの?」と聞いてみたい心境になったものです。「じゃあ、外形の微妙な凹凸も再現されたものなの?」とか、エッジの甘さも再現したの?」とか、言い出したらキリがありません。オリジナルとしては、それが「勢い」であったのかもしれませんが、「勢い」は「なぞる」ものではないと考えています。 そんなことよりも、後頭部三角形の大きさ、形状のバランスの方がよっぽど大事だと思っています。「した」のか「なっちゃった」のか?の項でも能書きをたれましたが、歪ませようとして作る馬鹿はいません。必要な歪みならばともかく、不要と判断されるならば、どんどん修正し、「理想的な旧1号第1話オリジナルマスク」に近づけた方が、私は良い結果が得られると思っています。 |