- 実物の価値、レプリカの価格 -

 現在、Specialの項でいくつかの「実物」(超七に関しては撮影用ではないですが・・・)を公開しています。特に「帰り超人」、「超人英」に関しては「門外不出」の理想的な状況で保存されてきたものです。公開の趣旨は、私の知る限り「現存する実物」を明らかにすることと、「実物はこうだよ」と見ていただくことで何らかの参考になればということなのですが、その裏には、「マスクの取引をして、人が信じられなくなった。」といった内容の話を聞いたことが動機となっているという事情があります。まあ、大人の世界では当然の事と言ってしまえばそれまでなのですが、どうもいろいろな考え方や欲がからんでいるために、話が複雑になってしまっている気がします。そこでこの項では、私なりに「実物」や「レプリカ」の「価値」について考えてみたいと思います。

 話の大前提として、「キャラクターの版権は守られるべきである。」という考えがあります。これをないがしろにする気は一切ありません。現実にそって話しを進めていく上で、版権を無視するが如き表現をする部分もありますが、あくまで個人の趣味の範囲として捉えてご理解いただきたいと思います。また、内容については全て私見であり、証拠や根拠を求められても困ってしまいますので、どうかご了承下さい。

 約20年前、撮影用プロップレプリカの流通に関する話が耳に入るようになりました。当時地方在住であった身としては自分とは関わり合いのない話として受け止めていたのですが、価格としては「素抜き」で5~6だったかと記憶しています。主にT映系のヒーローで、もともとは「借りる換わりに修理して返す」ということで関係者の了承を得て貸し出されたものの複製(あるいはそのまた複製)が、アンダーグラウンドで流れているのだと聞きました。少なくとも「売られている」という状況ではなく、材料費と手間賃を「謝礼」として手渡すのだろうと理解していました。その数年後、友人の誘いについていった某所にて膨大なレプリカを目にしました。ほとんど「何でもある」状態でした。当時、以前に聞いた話を思い出して「ああ、このことか。」と納得したものです。

 70年代(あるいはそれ以前)における撮影用プロップというものがどういう扱いだったかを考えると、当然撮影のために酷使されて傷んでおり、撮影終了後は全国のアトラクションショー回りか、破壊されてゴミとして廃棄されるかのいずれかだったかと思われます。「○△◇×はこの手で捨てた。」という話は何件か聞いています。ファンからすれば「げげげげ~!!!」という行為です。とてもこの場では書けません。ですから、70年代の撮影用プロップが良い状態で現存するということは極めて稀なことであり、撮影終了直後に誰かの手に渡るか倉庫に眠るかして保存される必要があったことは確かです。現存する「実物」の多くは、80年前後にかなり傷んだ状態で保護、保存されたものなのではないでしょうか。かつて「宇宙船」誌上で公開された「実物」もかなり傷んだ状態のものが多かったと記憶しています。

 そういった「実物」がどのようにして個人の手に渡ったかについてはケース・バイ・ケースだと思いますので想像の域を出ないのですが、少なくともその段階で多額の金銭がやりとりされたことはないと思います。熱心に現場に通うファンの羨望の眼差しに気づいたスタッフの方が「いいよ、持っていきな。」と言ってあげたこともあったでしょうし、管理するスタッフの立場としては破壊して「廃棄」しなければならない場合でも、破壊せずそっとゴミ捨て場へ放置して、さりげなく「捨てたよ。」と教えてあげたこともあったことでしょう。もちろん、「悪質なファンに勝手に持去られた。」というひどい話も耳にします。どちらにしても、そうやってファンの手に渡った「実物」には「価格」など当然なかったはずです。

 では「実物」がどうして「価格」がついて流通するようになったかを考えると、「トレード」を含む「取引」の中で、「相場」が形成されていったのではないでしょうか。狭い範囲で取引されているうちはそんなに高額にはならなかったはずですが、やがて、一部の「店」が一般に店頭で「販売」するに至って、急騰したと記憶しています。

 「実物」の「価値」とは、まさに「フィルムに写っているそのもの」ということで、唯一無二である「希少価値」だと思っています。その点、複数製作可能なレプリカとは比較の対象になりません。「実物」が関係者の手元を離れる機会がどれほどあるかは判りませんが、少なくとも70年代以前の「実物」がそうそうあるとは思えません。それだけを考えても、一度手に入った「実物」を手放すということは、それなりの事情があってのことだと思います。とするならば、取引としてできるだけ高く評価してくれる相手を選ぶのは当然でしょう。「購入」した「価格」以下では手放したくないという想いもあったでしょう。逆に、手に入れたいと思っている側から見ればめったにないチャンスなわけですから、取引対象が広がれば「価格」が高騰するのも当然です。こうして、もともとは「ゴミ」であったものが、「希少価値」と、「取引」を繰り返すことによっていつのまにか「高価な品」になってしまったのでしょう。

 正直な話、Specialで公開している「実物」が「市場」に出た場合、どの程度の「評価額」となるのかについてはとても興味があります。下賎な話ではありますが・・・。

 「実物」については「唯一」ということで「存在することが貴重」といえるのですが、これが「レプリカ」となると話が異なってきます。まず何と言っても複数の製造が可能であること、そして材料費や手間が生じることです。「プロップレプリカ」と呼ばれるものの「価格」というものは、この「複製費」がベースになっていると理解しています。

 一口に「レプリカ」といっても、程度が良いものから劣悪なものまで様々なものがあると思いますが、先ずはその「程度」については不問として「流通」について考えてみます。

 「実物」が手元にあるがそれは自分のものではなく、返却しなければならないとすると、複製を作りたいという想うことはファン心理として理解できます。そもそも「実物」を目の前にする機会そのものが稀なのですから、その複製をとれるなど一般のファンとしては夢の話です。複製の了承が得られた場合(了承など求めない場合も多々あったでしょうが)、それを行うためのスキルを持った人によって「レプリカ」は私的に作製されたのだと思います。そんな状況にめぐり合えないファンからすれば「ずるい」と思われるかもしれませんが、こんなことが平等に行われることなどあるはずがありません。

 自分のための複製はもともと仕事として行うのではなく趣味としてやるわけですから、金銭の問題ではないでしょうが、型を所有していることを知った他人に「一つ抜いてくれ。」と言われた場合にも全て自己負担で作業するというのは酷なものです。あるいは、複製に必要な材料費などを共同で分担するケースもあったでしょう。複製を業者に委託したのかもしれません。どちらにしてもここで「出費」が生じるので、「出費」を分担しようと考えることは想像できます。複製に必要となる材料費については、方法や複製する個数によっても異なるので想像するしかありませんが、少なくとも手間はたいへんなものです。手間そのものにお金はかからないのですが、手を動かさずに「費用」だけを分担するならば、「材料費」にこの「手間賃」が加算されたものが「複製費」ということになります。

 ここまでは「実物」の複製品なので、「子供」ということになります。このレベルで入手することができれば、複製の技術的な問題を考慮しなければ望みうる最高の状況でしょう。「原型」となった「実物」の素性が明らかであることは何より安心できることです。しかしそのためには「実物」の所有者が人一人を隔てた程度の距離にいなければならず、また、「実物」が破損する恐れがある「複製作業」をそうそう何度も行う(型には寿命があります)ことを許可するとは思えないことから、一般ファンの現実としてはほとんど有り得ないと言えます。

 問題はここから先になります。「子供」を入手した人が入手にかかった費用を、「孫」を製作して売ることで回収する、あるいはもともと利益目的で「孫」を製作することがあり、結果的にそれが繰り返されて流通していったというのが実状ではないでしょうか。それでも、表立って売買することができる「品物」ではありませんので、基本的には一般に知られないアンダーグラウンドの、いわゆる「マニア」間の私的な取引であり、何らかの「コネ」がなければなかなか手にすることはできないものであったはずです。ところがインターネットオークションが広く知られるに至った今日、ネット上という誰でも見ることができる場所に「品物」を晒すことができるために、数年前までは考えられなかった「市場」が形成されているのは事実でしょう。少なくとも「流通」していることは公知の事実となったわけです。

 このような「レプリカ」に「価格」が存在し、「売買」されていることを非難される方も多いでしょう。それは「版権」を考えた場合、当然であり正しい考えだと思います。しかし、実際には商売として成り立ってしまうために、自身の「コネ」を利用して手に入れた「モノ」で利益を得ている、「~ゴロ」(あまり良い呼び名ではありませんが)と呼称される様な人物も存在しているのだろうと思います。

 私は法律に関して専門ではありませんが、厳密に適用されれば、ファンとしての活動にも大きな制約が生じるような気がします。「イベント」での「当日限定版権」が限界なのでしょう。もっとも、「実物」の「レプリカ」について「当日限定版権」が認められるのかどうか、その後の取引においてその「当日限定版権」が有効なのかどうかは知りませんが・・・。

 また、「売買」されていることを非難される方の話の中で、「それ(売買)によって利益を得ることが許せない。」という主張を耳にします。穿った見方をするならば、「何でそんなに高いんだ?」ということと理解できます。そうなると、事の本質は「価格」ということになります。

 流通していることを知ってしまえば「欲しい」というのがファン心理であることは理解できます。そして、流通していて「市場」があるということは当然「価格」も存在するわけです。「価格」は需要と供給の関係で決まると考えられますが、供給数が絶対的に少ない以上、基本的には「売り手市場」であると認識しています。

 また、「価値」を判断する基準があいまいで、「複製費」がまちまちなこのような「品物」で、「適正価格」というものが存在するのかどうかは疑問です。ファンとしては、できれば「子供」、せめて「孫」と、できるだけ「実物」に近い状態で入手したいのが当然なので、より「価値」が高く感じてしまうのですが、それはあくまで「希少価値」であって、「複製費」という点では複製を繰り返した方が「高価」になってしまいます。いくら複数の製造が可能とはいえ、「複製費」の大部分は「手間賃」と考えられますので、「孫」、「曾孫」と「希少価値」の観点からは「価値」が低くなったとしても「流通価格」はほとんど下がらないと思います。

 こういったアンダーグラウンドにおけるマニア間の「取引」で生じる問題の多くは、ファン心理を利用して騙そうとする「売り手」の存在でしょう。それが「孫」であっても「子供」であるが如き表現をしたり、「実物」であると偽ったり、「希少価値」を吊り上げるための「嘘」が原因となる場合は多々あることでしょう。しかしながら、騙される「買い手」側の責任が大きいことも無視できません。そもそもアンダーグラウンドの「品物」ですので、その「売り手」の話を信用するなどナンセンスだと私は考えます。「実物」など、どれだけの数が流通しているのでしょうか?アンダーグラウンドである以上、当然「保証」などは有り得ない話です。重要なのは「品物」そのものであり、判断するのはあくまで自分の目なのですから、判断した事には自分で責任を持つべきでしょう。それができないならば手を出さないことだと思います。

 長々と書いてきましたが、ここからが本当に言いたいことです。

 ここまでは「レプリカ」の「程度(出来、不出来)」は不問として述べてきましたが、個人的には「レプリカ」の「価格」は「手間賃」=「技術料」だと考えています。出来が悪い「レプリカ」であれば、「子供」であろうが「孫」であろうが「価値」はないと思いますし、「新規な造り起し」であっても出来がよければ「レプリカ」として十分な「価値」があると思っています。これは「売買」の問題ではありません。

 結局は製作者の気持ちが問題で、対象となる「実物」が好きならば粗悪な「レプリカ」を流通させる気などおこらないはずです。少なくとも私にはできません。ましてや「実物」と偽るなど論外です。しかしながら、粗悪品が出回っている現状を考えると、「売り手」の問題はかなり深刻な状況にあるのかもしれません。

 「レプリカ」が「実物」と同等の「価値」を持つことなど有り得ないことです。「レプリカ」はあくまで「レプリカ」。この差は歴然としています。「実物」といわれていても客観的に納得できなければ「レプリカ」でしょう。「取引」の際には「肩書き」に惑わされず、「品物」と「価格(条件)」が納得できている場合に限ることが肝心と思います。

 正直、この項をいつまで公開しているか判りませんが、機会があれば「トレード」、「売買」、「自作」などについても私見を述べてみたいと思っています。

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