- 第1話マスク -

 私が旧1号としてイメージしているのは言うまでも無く、第1話で使用されたオリジナルのマスクですが、それと同じくらい鹿革スーツスタジオスチール、それに加えて、緑川ルリ子と蜘蛛男がらみの、オリジナルシングルレコードジャケットに掲載されていたスチール撮影時のマスクを強くイメージしています。スチールに関しては「クランクイン前後」とか「極初期」とか、かなりあいまいな表現でしか撮影時期が明らかにされていませんが、私個人の判断として上記3つは同じマスであると考えています

 そこで第1話におけるマスクの形状変化をもとに、二つのスチール撮影を含めた時系列を整理します。

 

 

○ オープニング

 オープニングにおいて、ロングショットでサイクロン号に乗ったカットに続き、ズームインしてマスクのUPになります。このマスクの青味がかった印象は、旧1号の象徴とも言えるものかもしれません。しかしながらこのマスク、明らかに第1話の撮影終了後、修理されたマスクです。

 修理されたものとする最大の根拠は、クラッシャー向かって右前歯の修復跡です。第1話本編では、この前歯破損前と、破損後応急処置をした状態しかありません。第2話の予告編で修理後のマスクが登場しますが、見た印象だけで言うとこのオープニングのマスク、第4話の後半、サイクロンに乗って戦闘員と戦うシーンのマスク状態に最も近いと感じており、修理、リペイントされたものであると考えていますので、今回の検討対象からは除外します。

 ちなみに、ロングショットのサイクロンは、フロントカウル前方下部に横長の穴が確認できるので、フロントカウル修正前の、極めて初期に撮影されたショットだと言えます。この穴があるとフロントサスペンションのストロークによってカウルに前輪が当たったのでしょう。直ぐに穴下部に切り欠きが入れられ、その後、穴を完全に除去する形で、フロントカウルの改修が行なわれています。

 この穴を完全に除去する回収前の、穴下部に切り欠きが入れられた状態で撮影されたスチールがありますが、個人的にあれは緑川ルリ子と蜘蛛男がらみの、オリジナルシングルレコードジャケットに掲載されていたスチール撮影と同時に撮影されたと考えています。ということは、クラッシャー前歯破損前の状況で、冒頭のロングショットにおける状態のサイクロンは存在しておらず、クラッシャー前歯修復後のマスクと同時の撮影はありえないことになります。

 実際の撮影のほとんどは、カウル改修後に行なわれていますので、オープニングのロングショットはテスト撮影と考えるのが妥当で、その後のオープニングマスクUP撮影とは時間が空いているはずです。

 また、オープニング中、変身シーンで用いられる回転バック前での横顔が登場しますが、このマスク、向かって右のクラッシャー前歯が破損したままの状態です。修理されていないことからオープニング冒頭のUPよりは前に撮影されたと考えられますが、本編のほとんどが破損前の状態です。このマスク、もしクラッシャー前歯が破損しただけで、マスク本体には何ら変更(塗装)が加えられていないとするならば、第1話マスクでの貴重な室内照明のカットということになります。そう考えて見てみると、かなり青味を帯びた色調で、照明による色調の違いを示す例として参考になります。

 

○ 本編

 最初に登場するのは、緑川博士と脱出時、崖の上に立つカットです。このシーン中、唯一の晴天ということで、おそらくは撮影本格クランクイン前のテストショット的なものだったのではないでしょうか。マスクの状態も極めて初期状態と考えられ、クラッシャーのサイドカバーが左右揃っているのは、第1話中このカットだけです。他のカットでは全て向かって右のサイドカバーがほとんど確認できませんし、左も折れ曲がっているものもあります。無論、修復跡を含む前歯の破損はありません。したがって、このマスクが本編に登場するマスクとしては最も初期の状態であると判断できます。

崖の上での初登場

 次に登場するのが変身シーンなのですが、オープニングでも書きましたが、このシーンで登場するマスクはクラッシャー前歯が破損した状態です。オープニング冒頭のUPでは修復されていますので、それよりは前に撮影されたものでしょうが、第1話本編よりも後で撮影されたと考えるのが妥当でしょう。

 そして、蜘蛛男との対決シーンです。大まかにはストーリーの進行順に撮影されたと考えて良いでしょう。判断の基準は向かって左サイドカバーの痛み具合と、クラッシャー前歯の破損です。

 蜘蛛男が「こんどこそ息の根を止めてやる」と言うUPショットに始まり、蜘蛛男と組み合っての格闘シーンまでは向かって左のサイドカバーはしっかりしています。変化が見られるのは蜘蛛男がロープを吐いたのを見上げるシーンで、このとき、向かって左のサイドカバーがマスクの内側に巻き込まれてほとんど見えない状態になっています。この状態になると、元の状態に戻ることはないと考えられますが、次の、ダムを上る蜘蛛男に向かってジャンプする直前のUPショットでは、向かって左のサイドカバーがしっかりとしています。ほとんど同じ場所での撮影ということを考えると、この2つのカットは撮影順が逆で、見上げるシーンの撮影の方が後で、この撮影のためにマスクを着けた際にサイドカバーを痛めたと思われます。ということは、この二つのカットが、ダムロケで最後に撮影されたと判断でき、向かって左のサイドカバーは、ダムロケでマスクを着脱する際に痛めたものであると考えられるのです。

「こんどこそ息の根を止めてやる」

 そして第1話でマスクが映る最後のカットが、ライダーキックを受けて苦しむ蜘蛛男を見るカットですが、このカットではクラッシャー前歯が破損しています。この状態は変身シーンの横顔と同じ状態なので、ダムでのロケとしては最後のFRPマスク使用カットと判断して良いと思います。ロケの最後にクラッシャー前歯の破損が発生し、応急処置で最後のカットを収録後、スタジオに帰って変身シーンを撮影したと考えるのが妥当でしょう。撮影当初、予備のマスクなどなく、撮影スケジュールもタイトであったことから、万全の修理など行なっている余裕がなかったと考えられます。つまり、第1話本編ではクラッシャー前歯破損修復後のマスクが使用されたカットはなく、全て同じ塗装であったと思われます。

 

○ 鹿革スーツスタジオスチール

 講談社「仮面ライダー大全集」の表紙など、旧1号初期マスクとして最もポピュラーなスチールなのですが、撮影条件の違いなどから第1話本編とは印象が異なって感じられます。しかしながら、このスチールの撮影時期について、先にも書いたサイドカバーとクラッシャー前歯の状態から考えると、このスチールでは向かって右のサイドカバーがすでになく、左がしっかりとした状態で、クラッシャー前歯の破損はありません。ということは、崖の上での初登場シーンより後で、蜘蛛男がダムの壁を登っていくのを見上げるカットよりも前ということになります。さらに、向かって左のサイドカバーがほとんど痛んでいないこと、クラッシャーの切り込みにバリが見られる状況を考慮すると、蜘蛛男が「こんどこそ息の根を止めてやる」と言うUPショットというか、ダムロケよりも前と考えるのが妥当であると考えています。

鹿革スーツスタジオスチール

 

○ 緑川ルリ子と蜘蛛男がらみのスチール

 雪が残る曇天時の撮影で、マスクはかなり暗くて青っぽいグレーが強く感じられます。

 このスチール撮影時を考える根拠も鹿革スーツスタジオスチール同様で、サイドカバーとクラッシャー前歯の状態です。このスチールにおいても向かって右のサイドカバーは認められず、クラッシャー前歯の破損が無いことから、鹿革スーツスタジオスチール同様、崖の上での初登場シーンとダムロケの前と考えるのが妥当でしょう。ということは、マスク破損の恐れがあるアクションシーンの撮影を挟まない、この二種類のスチールのマスクは同じ状態(塗装)と考えられます。

 しかしながらこのスチール、何枚かクラッシャーが開いたカットがあるのですが、クラシャーの切り込みに鹿革スーツスタジオスチールで見られる「バリ」が見られません。この違いを考慮し、鹿革スーツスタジオスチールとこのスチールで使用されたクラッシャーを同一するならば、このスチールは鹿革スーツスタジオスチール後、ダムロケ前に撮影されたということになります。

 ちなみにこのスチール、良く「FRP製クラッシャー」として解説されており、確かにそれっぽくも見え、鹿革スタジオスチールとではクラッシャーが異なっていいるという考え方もありますが、私は「FRPクラッシャーの使用はあらゆる撮影においてなかった」という前提で考えています。当時のスタッフの方の証言も「撮影は全てラテックス製クラッシャー」でありますので、FRP製クラッシャーでの撮影があったとするのは、ファンの勝手な思い込みというか、願望であるとするのが現実的なのではないでしょうか。

 

 これで、二種類のスチールと本編撮影の関係がほぼ推定できたわけですが、一つ不明な点が、触角先端の突起です。

 この触角先端の突起については確認が非常に困難なのですが、鹿革スーツスタジオスチール、緑川ルリ子と蜘蛛男がらみのスチールでは突起がないのに対して、ダムロケの戦闘員との格闘シーンでは向かって右触角先端の突起が認められます。左側にはありません。このことをどう判断材料として扱うかは難しいところですが、マスクが複数存在したとか、鹿革スーツスタジオスチールと本編撮影の間にマスクの改修が行なわれたという可能性はほとんどないと考えています。

 初登場である崖の上でのシーンでは触角の先端が画面に入っておらず確認できませんが、二つのスタジオスチールの前に撮影されたとするならば、触角先端の突起はなかったと考えるべきでしょう。

 痛み易い触角ですので、アクションシーンの撮影前、あるいは撮影中に交換されたと判断するのが妥当と考えています。全てのダムロケにおいて突起が確認できるわけではありませんし、向かって左側の触角には突起が確認できません。

 崖の上の初登場シーンと、「こんどこそ息の根を止めてやる」というシーンのマスク塗装は同じであると考えていますので、このアンテナの一件を根拠に、二つのスチールと本編撮影の時系列を考え直すことには無理を感じます。個人的な判断基準として、触角先端の突起よりも、サイドカバーの状態を重視します。

 

 

 上記の理由により、「崖の上初登場」→「スチール2種」→「ダムロケ」という、大まかな撮影順を推定すると、鹿革スタジオスチールのマスク塗装も同じということになります。つまり、見た目の印象は全て撮影条件や媒体の違いによるものと考えられるのです。

 また、このマスク時系列を推定する意義として最も重要なことは、サイドカバーの色です。第1話本編では、サイドカバーの色がマスクの色と同じ色であると判断できるカットはありません。崖の上の初登場シーンと、ダムで蜘蛛男と対峙し「こんどこそ息の根を止めてやる」と蜘蛛男が言うシーン、さらには蜘蛛男ともつれ合うシーンではそれっぽく見えるのですが、光線の具合、材質の違いによるものとする可能性を否定できません。逆に、第2話の予告編ではクラッシャー、サイドカバーが修復されたマスクのサイドカバーが、クラッシャーと同色であることが明確に確認できます。一方、鹿革スタジオスチールにおいて、サイドカバーとマスクの色が一致すると明確に判断できるものがあります。

 クラッシャー修復後のマスクでサイドカバーがクラッシャーと同色で塗られている以上、旧1号第1話ではサイドカバーがマスクと同色であったとするためには、第1話撮影時のマスクが鹿革スタジオスチールと同じ状態でなければならないのです。

 色々と書いてきましたが、これはあくまで私見であり、触角先端の突起など、自分に都合の良いように解釈した部分が含まれています。ただ、全体の流れを考えていく上で、触角の問題以外は当時の撮影状況、スケジュールを想像すると、最も妥当な解釈だと考えています。

旧1号

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