番組製作当時のスタッフの証言として「濃い緑色」と言われています。 私が旧1号の塗装について試行錯誤をはじめた際、真っ先に否定してとりかかったのが、この「濃い緑色」という証言です。当時、私は「桜島1号を含む全ての旧1号の塗装(下地)は、一つの色で説明できる」という考えに疑念を抱いていました。基本的には「桜島1号の塗装はホワイトパールをオーバーコートしていない旧1号」と考えていましたが、旧2号後半で良く見られる「緑色」の「桜島1号」マスクについては、「緑色に塗装した」と解釈しており、先のスタッフの証言は「桜島1号最後の色」であって「旧1号第1話の色」とは異なると考えていたわけです。個人的な印象として、旧1号のマスクというとどうしても「青」のイメージが強くあり、「濃紺」に「ホワイトパールのオーバーコート」を行うことで室内照明においては「鹿革スーツスタジオスチール」の色調が、曇天下においては「緑川ルリ子と蜘蛛男がらみのスチール」の色調が、ほぼ再現できていたことが、結果的には判断を誤らせてしまったと反省しています。 第1話を見直せば、ダムにおける戦闘員との格闘シーンなど、晴天時のマスクは明らかに「濃い緑色」です。では、第1話と「鹿革スーツスタジオスチール」、「緑川ルリ子と蜘蛛男がらみのスチール」とではマスクの塗装が異なるのか?といえば、どう考えてもそれでは辻褄が合いません。いくら「同じ色を作ることが難しかった」と言われる旧1号とはいえ、「濃い緑」と「濃紺」ではあまりに違いすぎますし、「調色の違い」の範囲を超えています。ということは、「桜島1号」も含めて旧1号の塗装では、「晴天時に濃い緑色、曇天時に濃紺」であることが必要になるわけです。 それに気づけば結論は一つ、「旧1号といわれる全てのマスク(旧2号も含む)の塗装は、原色のブルー(透明度が高い)と緑色の混色」ということしかあり得ません。 ある程度塗装を経験した方ならばわかると思うのですが、ラッカー系のブルー原色(白や黒などの混ぜものがない色)の場合、塗料そのものの透明度が高く、塗り重ねることでどんどん色が濃くなっていきます。厚く塗り重ねると、最終的にはいわゆる「濃紺」になります。白や黒が混じっていると隠蔽力が強く、薄い塗膜で一定の色調になるのですが、照明の具合によって旧1号に見られる変化はありません。また、「厚塗り」というところがミソで、模型製作を趣味とする者にとって、塗装に対する一般的な考え方として「塗膜を薄く仕上げる」というものがあり、あえて塗膜を厚くすることに抵抗があるのですが、マスクのようなものでは逆に、塗装面積が大きい分、均一に塗装するためには必然的に「厚塗り」になってしまいます。 実際のマスクでは「厚塗り」であったとするならば、「緑」に「原色のブルー」を混ぜて「濃い緑」にして塗装すれば、「厚塗り」の効果によって曇天や室内照明では非常に暗い「濃紺」、晴天時には透明度が高いブルーが透けて「緑」が前面に出てくるという塗装が可能になります。これは主に「旧2号」、「桜島1号」で確認できる現象です。 旧1号当時の作業においては、下地塗装はハケ塗りだったと思われます。理由は、明らかな塗りムラがほとんどのスチールで確認できるからです。ハケ塗りだったからこそ厚塗りになってしまったとも言えます。ただ、今回はハンドピースで吹きたかったので、それに合わせて厚吹きしてみながら、緑の添加量を調整しました。 使用するハンドピースは手元にあるノズル口径0.65mmのものを使用しました。これでも模型用のハンドピースとしてはノズル径が大きいものです。本当は車のボディー塗装などに使える、もっとノズル径が大きなものを使用したほうが良いでしょうが、まぁ、そこはしかたがありません。ノズル径は、それによって噴出する塗料の量が決まってしまうために、小さいものですとマスク全面に塗料を乗せるために必要な時間が長くなります。時間だけの問題ならば良いのですが、塗膜厚さの不均一、マスク全面が塗料で塗れた状態に塗装することが困難など、塗装の結果に影響する問題が多々発生します。個人的な感覚では、今回のノズル径(0.65mm)が最低限です。 私が長い間缶スプレー塗装に固執してきた理由はそこにあり、塗装に慣れていない方であればなおさら、ノズル径が大きなものを使用することを薦めます。また、結果的に缶スプレーで納得できるものを見つけることはできませんでしたが、晴天下での「緑」の再現をあきらめて、室内照明でそれらしい雰囲気ということであれば、じゅうぶんに使える色が市販されています。 今回、塗料については、自分で調色することを考えた場合に最も色数が豊富で入手が容易な、模型用ラッカー系塗料(Mr.COLOR)を使用しました。実物のマスクではロックペイントが使用されていたという話を聞きますが、個人のレベルで誰でも入手可能というわけではありませんし、30余年を経過した現在において、当時と全く同じ塗料が手に入るとも思えないので、あまりこだわっても意味がないと判断しました。 また、塗膜の経時変化、変色という点で自動車用の塗料を好まれる方も多いと思いますが、赤などの退色しやすい色を直射日光や蛍光灯直下で保存しない限り、個人的にはそんなに差があるとは思えません。変色したら塗りなおせば良いことで、そんな問題よりも、豊富な色数の方がよほど重要だと考えています。 試行錯誤を経て調色し、塗装したものが上の写真です。塗料はMr.COLOR No.5「ブルー」とMr.COLOR No.6「グリーン」を4対1の割合で混合したものです。結果的には極めて単純な調色です。 こうして、室内照明で見ると、緑がかってはいるものの、濃紺に見えます。 ところが、太陽光下ではこんなにあざやか(?)な緑になるわけです。 この緑色の具合は、「ブルー」と「グリーン」の配合比を変えるか、配合前に「グリーン」の色調を変えておくことで調節が可能です。その際「グリーン」には透明度は不要なので、白や黒が混じった、彩度が低い色が使用できます。今回は、第1話後半、晴天下の戦闘シーンで見られる色をイメージし、上記の配合比としています。 旧1号マスクに関して「同じ色をだすのが難しかった」と伝えられる当時のスタッフの方の証言がありますが、ブルーとグリーンの配合比と考えるのが妥当でしょう。決して何種類もの色を複雑に混合したという意味ではないと思います。 後部の三角形についてマスキングして様子を見てみますと、いかに実物が左にオフセットされていたかが判ります。個人的には真中が良いので、できるだけ中心線へ頂点を持っていきます。 マスキングテープはタミヤ製のありきたりのもので、あらかじめマスクの中心線にテープを貼っておき、それを基準とします。もちろん、塗装前にこの中心線ははがしてしまいます。写真ではやや高くなっているので、最終的にはもう少し低くしています。 後頭部三角形、クラッシャーをMr.COLOR No.16「濃緑色」で塗装後、マスキングテープをはがすとこんな感じです。マスクが上を向いているので三角形が低く感じますが、上の写真における実物の三角形と高さを揃えてあります。 「濃緑色」はマスクの色とは異なり非常に隠蔽力が強い塗料のため、薄い塗膜で均一な色調が得られます。この点、透明度が高いマスクの色とは異なります。したがって、ベタ塗りしたマスクをマスキング後、後頭部三角形、クラッシャーを塗装するのが望ましいでしょう。
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