旧1号、新1号で感じられるマスクの「メタリック感」は、「ホワイトパールのオーバーコート」によるものです。 ホワイトパールをオーバーコートする方法としては、 ①ホワイトパールの缶スプレーを使う ②パール顔料(パール粉)をクリアー塗料に混ぜてハンドピースで塗装する ③ホワイトパールを含有したビン塗料をハンドピースで塗装する の三つの選択肢がありました。 最も手軽なのが①の缶スプレーなのですが、ムラ無く塗装するためにはそれなりに厚塗りする必要があり、旧1号第1話のイメージから離れてしまう可能性があります。経験上、缶スプレーで薄く均一なホワイトパールのオーバーコートは非常に難しく、どうしてもムラが生じ易いのです。かといって、②パール顔料を使った塗装については経験があまりなかったため、最も安易な方法として③を選択し、Mr.COLOR「ホワイトパール」2に対してMr.COLOR「クリアー」1を混ぜ、シンナーでシャビシャビにした塗料を薄く吹きました。 もちろんこれは手元のノズル径0.65mmのハンドピースを使用しており、小さな径のものですと、ムラなく塗装するのはかなり至難の業となります。 第1話の本編映像、2種のスチールを検討していくと、思ったほどパールは厚くオーバーコートされていない気がします。完成後、どの照明状態で見る機会が最も多いかということで、オーバーコートの具合を加減するのが良いでしょう。厚く吹き重ねるほど、色調が明るくなります。 今回の下地塗装に対するホワイトパールの効果は強力で、これ以上吹き重ねるのには躊躇がある状態です。室内照明ではやや暗めに感じますが、第1話マスクの塗装状態は、おそらくこんな感じだったのではないかと想像しています。 ホワイトパールのオーバーコート後、ノーズ脇の三角形部分を黒で塗り分けてから、クリアーコートします。クリアーコートには市販ラッカースプレーの「クリアー」を使用し、垂れる寸前まで厚吹きし、「研ぎ出し」をします。 「研ぎ出し」とは、クリアー塗装後、塗膜表面に形成された凹凸を#1000以上の細かい研磨紙で削り落としてからコンパウンド仕上げをすることにより、平滑な光沢面を作る技法で、自動車模型などでは一般的なものです。 上が研ぎだしている状態です。雰囲気を感じるためにCアイを取り付けていますが、反射板は表面のツヤを消した0.5mmのアルミ板で、色はリゴラック(注型樹脂)そのものの色です。 今回、ノーズ脇三角形上部の塗り分けでは、第1~4話や、鹿革スーツスタジオスチールなどで確認できる、「モールドになっているのかもしれないけれどおそらくは安直なマスキングによってできたライン」を再現してあります。 ノーズの下部から真っ直ぐにマスキングテープを貼り、いけるところまでいくと、ちょうどCアイの外形とラインが重なる手前で力尽きてしまいます。そこで、アンテナ基部付近からCアイ外周部へ向けてもう一本マスキングテープを貼ると、ちょうど、第1~4話や、鹿革スーツスタジオスチールなどで確認できる塗り分けラインと同じになるわけです。 このライン、わざわざ意図して塗り分けられたものではないと考えられますので、再現するならば、2本のマスキングラインで構成する必要があります。それができない場合、ノーズからCアイに続くライン形状の修正が必要ということになります。 また、個人的にはビスの頭が飛び出すのは好きでないので、ビス穴はザグってます。最終的にはビスの頭も塗装します。 実物と全く同じビスを使用するというのは無理ですが、スチールで確認する限り、第1~4話や、鹿革スーツスタジオスチールなどのマスクではビスの頭はマスクに埋もれていますし、塗装もされていると思います。 革製のサイドカバーは保存性を考えて「ソフビカラー」で塗装します。Mr.COLORなどのいわゆる「ラッカー系」塗料ですと、しばらくするとヒビが入ってきます。 塗装はマスクと同色で行ないますが、塗料が異なるために、色合わせが困難となります。最大の問題は、「ブルー」の透明度が低く、厚く吹くと、鮮やかな色調になってしまうことです。色々と試行錯誤した結果、黒の下地に緑を強めに調色した塗料を薄く吹くことで、それなりに仕上げることができました。 当然、ホワイトパールのオーバーコート、クリアーコートも行ないますが、パールに関しては市販のパール顔料(粉)をソフビカラーのクリアーに添加して薄く吹き付けました。オーバーコートは、「ソフビカラー」のクリアー缶スプレーを使用しています。 今回やむを得ず、初めてパール顔料を使用したわけですが、これまで使用していたMr.COLORのホワイトパールとはかなり感じが異なり、非常にパール粒子が細かく、青っぽい光沢が出ます。その分、下地の緑を若干強くしてあります。マスク塗装には使用したことはありませんが、上手く使えば良い効果が得られると思います。 ビスの頭を塗装し、パーツを組んだ状態です。Cアイとアルミ板の間には、照明用パラフィンの中で一番薄いピンクを入れてあります。これは東急ハンズの照明コーナーなどで入手可能なもので、おそらくは撮影当時も同じ構造であったと思います。 Cアイが正しい位置にセッティングされており、覗き穴部の厚みが適切であれば、覗き穴の塩ビスモーク板とCアイのエッジはピタリと合います。 うす曇りの屋外での撮影により、雰囲気が出ます。室内照明ではかなり色が濃く感じられるのですが、ビデオなどで確認していくと、同じ傾向は認められます。良く言われる「マスクに空が反射した色」という感覚は確かにありますが、空の青色が映っているというよりは、どちらかというと光源の違いが大きい気がします。例えば、Cアイをこのまま室内照明で見ると、かなりどぎついピンクになります。1話ではそういった照明のシーンがなかっただけで、撮影条件が変われば、かなりマスクの印象も変わっていたことと思います。 直射日光でパールを飛ばして見ると、こんな色になります。こうして見ない限り、マスクの色は濃紺が強く感じられる状態です。この晴天下で見た緑が強いマスクの色は「スーパービジュアル 仮面ライダー」の色と、ほぼ同じと言ってよい状態です。この色具合は、晴天下で撮影されたスチールや画面で確認できます。 アンテナ、Cアイ、Oシグナル、サイドカバー、クラッシャーは全てビス止めになっているので、簡単(とは言えないかもしれませんが)に取り外しが可能となっています。
これまで塗装について色々と試してきましたが、第1~4話、鹿革スーツスタジオスチールでのマスクにはじまり、旧2号を含む桜島1号までの塗装については、ほぼこれで辻褄があったと考えています。 「同じ色をだすのが難しかった」と伝えられる当時のスタッフの方の証言が「ブルーとグリーンの配合」、「ホワイトパールの厚み」のどちらを指すのか不明ですが、「調色」と捉えるならば、「ブルーとグリーンの配合」と考えるのが妥当でしょう。決して複雑な調色ではなかったと思います。一方、「見た目(仕上がり)」と捉えるならば、下地の色が暗いだけに、ホワイトパールのオーバーコートの厚みであったと考えられます。 どちらにしても、我々TVの前で見ていた者は、ブラウン管やスチールで見る色調の違いが印象的であったわけで、どうしても「撮影」というフィルターを「塗装色によるバラツキ」の範疇に含めてしまいがちです。しかしながら、今回検証していく中で、従来「塗装色のバラツキ」とされていたであろう変化の大部分は1種類の塗装色で再現でき、調色のバリエーションとしても極限られた範囲であると、個人的には確信しています。
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